PART1 Introduction

 えー、では、そろそろ、始めましょうか。

 皆様!
 本日はここ、国立井野荘園博物館に、本当に多くの方々にお集まりいただきまして、まことにありがとうございます!
 本日、2180年5月10日、この記念すべき日に、現代の最先端、輝かしい未来への希望溢れる技術が、とうとう実用化されます!最初の公式なタイムトラベラーが、人類初の時間旅行へ旅立ってから実に80年、半世紀以上に及ぶ研究と実験の末に安定したワームホールを発見し、更に30年の時を経て、とうとう実現した、一般実用化ワームホールによる「タイムトラベリングツアー」!
 来るべき23世紀は、まさに過去と未来を行き来し、未来の技術も、失われた遺産も、この手に出来る世界となるでしょう……!
 ……さて、皆様そろそろご準備できましたでしょうか?本日、テープカットに臨まれるのは、科学省大臣、国際タイムトラベリング協会会長、日本タイムトラベル研究所所長、全日本旅行業連盟名誉会長……
 それでは、除幕をお願いします!

 タイムトラベル実用化の研究の歴史は凡そ200年。時間旅行の概念は古くからあり、かの有名な相対性理論によって時間の歪みが科学的に理論付けられてからも、それを現実世界で実現する技術と方法については手出しができない時代が続いた。それが現実味を帯び、第一線の(エキセントリックではない)科学者がその分野の研究に本格的に乗り出したのは、1980年に最初のマウス ―ワームホールの出入口— のペアが見つかってからと言っていい。ただし、この時点ではまだ偶然の産物でしかなかった。
 生物を含めた物質が実際に時間旅行をするには理論的にはいくつか方法があるが、現在実用化に至っている方法のベースはこのマウスの亜光速移動を利用したものだ。
 そして時を経ること120年後の2101年、22世紀の幕開けの年に最初のタイムトラベラーが誕生する。彼の名は歴史に刻まれることとなるが、実験自体が成功だったかどうかについては80年を経て尚、未だに議論が止まない学会因縁の案件となっている。

 この物語は、その実験体となった茂上ハルキの旅の記録である。

8弦ギター女性ボーカルロックバンドKALEIDOSTYLEのオフィシャルWEBサイト